痴漢を疑われたかもしれない日
マインド

痴漢を疑われたかもしれない日

2026年7月1日

痴漢は、絶対にあってはならない。

同じように、痴漢の冤罪も絶対にあってはならない。

なぜなら、どちらも人の人生を壊すからだ。

先日、電車の中で僕はそのことを初めて自分事として考えた。

きっかけは、目の前にいた女性のスマートフォンに表示されていた、たった一つの言葉だった。

「防犯ブザー停止中」


「防犯ブザー停止中」と表示されたスマートフォン

その日、僕は電車に乗っていた。

自分が降りる駅だと思い、ドアのほうへ近づいた。しかし、駅を間違えていた。

仕方がないので、そのままドア付近で次の駅に着くのを待った。

しばらくして、ふと目の前を見ると、ドアの隅に女性が立っていた。その人のスマートフォンの画面がちらっと見えた。

そこには、こう書かれていた。

「防犯ブザー停止中」

防犯ブザー停止中?

なんだ、それ。

よくわからなかった。ただ、なんだか怖いと感じた。僕はそこから2、3歩ほど後ろへ下がった。

しばらくして自分が降りる駅に着き、僕はそのまま電車を降りた。

まさか、僕が痴漢だと思われていたのか

電車を降りてすぐ、僕は「防犯ブザー停止中」という言葉を調べた。

すると、画面に大きくこう表示されるアプリが出てきた。

「痴漢です 助けてください」

まさか、僕が痴漢だと思われていたのか。

そう考えた瞬間、震えた。

もし、あの場でブザーを鳴らされていたら、僕はどう対応していたのか。

その後、僕の人生はどうなっていたのか。

何度も何度も、頭の中をぐるぐると回った。

想像するだけでも恐ろしかった。

もちろん、その女性が本当に僕を疑っていたのかはわからない。

僕が見たのは、スマートフォンに「防犯ブザー停止中」と表示されていたことだけだ。実際に何を考えていたのかは、本人にしかわからない。

それでも僕は、何もしていないのに痴漢だと疑われたかもしれない、と感じた。

そして、強い恐怖のあとに、腹立たしさが湧いてきた。

自分がそんなことをするわけがない。

何を疑っているんだ。

こんなことで自分の人生を終わらされてたまるか。

ひどく憤慨した。

立ち止まって、女性側の気持ちを考えた

ただ、一度立ち止まって考えた。

もし女性側から見たら、どうだったのか。

駅に着いた瞬間、知らない男性が急に近づいてきた。

僕には何の意図もなかった。ただ駅を間違えただけだった。しかし、相手にはそんな事情はわからない。

もしかすると、謎に近づいてくる男性の存在は、非常に怖いものだったのかもしれない。

僕は、それまで痴漢対策のアプリを入れている女性がいることすら知らなかった。

もしかしたら、その女性は過去に似たような経験をして、本当に恐怖を感じたのかもしれない。だから、いざというときに自分を守れるよう、そのアプリを入れていたのかもしれない。

もちろん、これも僕の想像でしかない。

僕は、その女性の気持ちを勝手に代弁したいわけではない。最初に湧いた腹立たしさを誰かにぶつけたいわけでもない。

ただ、この出来事を通して、男性にも女性にも伝えたいことができた。

女性に伝えたい2つのこと

1.いざというときは、道具に頼っていい

これは僕にとって大きな学びだった。

本当に怖いとき、声が出るとは限らない。

誰かに助けを求められるとも限らない。大声を出せるとも限らない。

そんなとき、防犯ブザーやアプリがあれば、周囲に危険を知らせることができる。

自分の身を守るために、そうした道具を使う選択肢は持っておいたほうがいい。

2.その判断が、相手の人生を左右する可能性も知ってほしい

もちろん、実際に被害に遭ったなら、ためらわず助けを求めてほしい。

一方で、勘違いによって疑われた人の人生が大きく変わる可能性もある。

僕が意図せず近づいたことで、その女性に不快な思いをさせたかもしれない。しかし、僕は何もしていない。

もしあの瞬間にブザーが鳴っていたら、僕が何を言っても、その場ですぐ信用してもらえた保証はない。

仮に最後には疑いが晴れたとしても、疑いをかけられた本人が負った傷まで、なかったことにはならない。

痴漢の被害を訴えることをためらってほしいわけではない。

誰かを疑い、周囲に知らせる行為には、それだけ大きな影響がある。そのことも知っておいてほしいという話だ。

世の中をマクロで見れば、痴漢に関するデータや、長く積み重なった歴史があるのだと思う。

しかし、ミクロで見れば、目の前にいる一人の人間が本当に何かをしたのかは別の問題だ。

一人ひとりを、属性だけで決めつけてはいけない。

男性に伝えたい2つのこと

1.間違われるような行動をしない

「李下に冠を正さず」とは、よく言ったものだ。

男性側に何の意図がなくても、相手がどう受け取るかまでは決められない。

僕もただ駅を間違えただけだった。しかし女性から見れば、知らない男性が突然近づいてきたように見えたかもしれない。

納得できないと感じる男性もいると思う。

それでも、疑いをかけられた瞬間に、自分の無実をその場で信じてもらえる保証はない。その状況では、男性も社会的に弱い立場になり得る。

だからこそ、その事実を理解したうえで行動する必要がある。

混雑した車内では距離を取る。手の位置を意識する。相手に誤解を与えそうな動きを避ける。

そして、もし本当に間違われたなら、やっていないことは、やっていないと主張する。

2.万が一の対処を事前に調べておく

こうした出来事は、誰に降りかかるかわからない。

そのとき、何をすべきなのか。

どう行動すべきなのか。

逆に、何をしてはいけないのか。

何も起きていないうちに、一度は調べておいたほうがいい。

周囲に証人がいるかもしれない。助けてくれる人もいるかもしれない。しかし、他人が必ず助けてくれることを前提にしてはいけない。

最後に自分の身を守るのは、自分だ。

無実であるなら、その事実を適切に主張するための知識を持っておく必要がある。

相手の気持ちや立場を考えて行動しろよ

僕は、痴漢の話だけをしたいわけではない。

冤罪があると騒ぎ立て、女性を責めたいわけでもない。

伝えたいのは、痴漢も冤罪も実際に起こり得て、いつ自分に降りかかるかわからないということだ。

本当に痴漢被害に遭えば、その人は長く心に傷を負うかもしれない。

一方で、何もしていない人が痴漢を疑われれば、その人は社会から「痴漢をした人かもしれない」という目で見られる可能性がある。あとから疑いが晴れたとしても、負った傷や、周囲に残った疑いまで簡単に消えるとは限らない。

どちらも、相手の人生を壊す。

だから、痴漢は絶対にあってはならない。

同じように、冤罪も絶対にあってはならない。

正直に言えば、僕もこの出来事が自分の身に降りかかるまで、ここまで真剣に考えたことはなかった。

男性には、女性が感じる恐怖を想像してほしい。

女性には、疑いをかけられる男性の恐怖も想像してほしい。

すべてを完璧に理解することはできない。それでも、想像することはできる。

相手の気持ちを持って行動するべきだ。

少しでも、痴漢で傷つく人が減ってほしい。

そして、冤罪で傷つく人も減ってほしい。