
多くの若手が「管理職になりたくない」と言う。
でも、それはあくまでウォンツであって、インサイトではないと僕は思う。
実際に忌避されているのは、管理職そのものというより、業務の負荷が高く、成果責任の重い役職全般だ。
より自由な働き方をして、専門性を高めて、食いっぱぐれない力を身につけたい。そう考える人が増えているだけなんじゃないだろうか。
それ自体は、別に間違っていないし、否定するつもりも毛頭ない。
どこでも通用する力とは何か
ただ、一つ聞きたい。
どこへ行っても通用する力って、結局何なんだろう。
産業革命が何度起きても、どれだけイノベーションが生まれても、揺るがずに残り続けてきたものが本当に食いっぱぐれない力なのではないか。
それがマネジメント力であると僕は思う。
大昔、戦をするときも、軍を動かしていたのは一人の武将だった。軍師と呼ばれる人間が、持っている兵力と相手の状況を見て、どこにどうリソースを配分すれば最大の力を発揮できるかを考えていた。それも、マネジメントだ。
管理職やマネージャーというのは、ただの役職名にすぎない。役割で言えば、マネジメントをする人、ということだ。
その力が、本当に必要ないと言えるだろうか。
マネージャー以外で、本当にマネジメント力がつくと言えるのだろうか。
実際、僕は管理職を打診された時、迷いはまったくなかった。
経験が自分を育てる。そう考えていたからだ。
今より大変になることは分かっていた。それでも、その先に得られるリターンの方が大きいと思えたから、即断でやると答えた。
やらないという選択肢もあったが、やることのメリットが圧倒的に大きいと感じた。
自分の時間が欲しくてやりたくないという人の気持ちも分かる。ただ、僕はこう考えた。30代、40代になって初めて部下を持ち、失敗が許されない環境に放り込まれる方が、よっぽど怖い。だったら、失敗できるうちに、若いうちに挑戦しておいた方がいい。それが、僕の意思決定だった。
マネジメントとは、自分の人生そのものでもある
マネジメントとは、組織を通じて成果を最大化させることだ。
だとすれば、自分の人生もまた、マネジメントの一つだと言える。組織とは、自分が持っているリソースそのもの。そのポートフォリオをどう組むかによって、人生という成果は変わってくる。
理論は、誰でも学べる。でも、それを自分の中の型としてアウトプットできる、実践できる立場は限られている。管理職やマネージャーという立場だ。
自分でチームを率いて、リーダーとして動くことはできる。でも、最終的な意思決定ができるかと言われると、そうではないことが多い。実際に意思決定ができるのは、管理職やマネージャー、あるいは経営者になってからだ。
マネジメント力は、どんな仕事にもついてくる
人は、理論ではなく、機会と実践で育つ。
もし本当に、これからの人生にマネジメント力がいらないと決めているなら、管理職という経験を選ばなくてもいい。
ただ、マネジメント力は、人と人が関わるあらゆる仕事についてくる。
プロジェクトを遂行する力と、マネジメントする力は違う。プロジェクトを進める力は、人をどう動かすかという話だ。マネジメントは、成果を最大化するために、どんな組織を作るか、どんな組織文化にしていくか。
もっと本質的な問いだ。
これを本気で考える機会があるのは、管理職やマネージャーだけだ。
日本の管理職が抱えている問題
とはいえ、管理職やマネージャーになった人の中にも、これを考えていない人はいくらでもいる。
正直、その人たちは、管理職やマネージャーとは呼べない。本来やるべきことを、やっていないから。
「プレイングマネージャーで、仕事が溜まっていて、本来やるべきことに集中できない」
そう言い訳する人を、何人も見てきた。
忙しいだけで、やるべきことができず、部下と会社の板挟みになって、それでいて報酬は少ない。
正直に言うと、僕自身にも、そういう時期があった。
目の前のことをやらなければいけない。
そう思い込んで、ただひたすらタスクをこなすだけの人間になっていた時期が。
そこで自分に問い直した。本当に、解くべき問いを解けているか。
本質的には、目の前の仕事を仕組み化することが最も大事である。
部下に振ること。自分がやることじゃない。
成果は組織で出すものであり、そのために組織がある。部下がいる。
自分が出さなければいけない理由なんて、どこにもない。ドラッカーの言う「解くべき問い」を解けていなかったのは、他の誰でもなく、僕自身だった。
だから、仕組みを作った。部下が何をやっているかを管理するための管理帳票と時間帳票を作り、定例のミーティングを入れて、定期的に報告させるようにした。自分から確認しいかない。部下から報告が上がってくる仕組みにした。
忙しいのは、その仕組みを作れていないからだ。それだけの話だ。
- 「仕組みを作る時間すらない」
- 「社長からいろいろ降ってくるから、ただ時間を投下するしかない」。
そう言い訳するのが、できないマネージャーの特徴だ。
仕事が増えるなら、組閣を考えるか、やる仕事を減らすか。
そこを決めるのも、マネージャーの意思決定だ。それができないから、ただ忙しいと言い続けることになる。
これが、日本の管理職が抱えている大きな課題だと思う。
管理職は、ただ部下を管理すればいい仕事じゃない。
組織を通じて成果を最大化する、リーダーであるべきだ。
それでも管理職になりたくないなら
管理職になりたくない理由も、分かる。
それだけの責任を背負うのに、報酬が上がらない。
今の仕事に、部下を見るという仕事が上乗せされるだけで、残業代も出ない。そういう構造になっているからだ。
だったら、交渉すればいい。
管理職になるなら、今の仕事を外してほしい。部下をつけてほしい。その上で、報酬を上げてほしい。そう会社に求めていい。
それでもなお管理職になりたくないなら、それは「自分の人生にマネジメント力はいらない」という、一つの意思決定だ。それならそれでいい。
管理職の先にしか見えない景色がある
ここまで読んでも、管理職やマネージャーをやりたくないなら、やらなくていい。
ただ、管理職をやった先でしか見えない景色、得られない報酬、得られないやりがいが、確かにある。それだけは知っておいてほしい。
組織を通じて、大きな成果を出すということ。
専門性を磨いて独立したい人生も、自由に働きたい人生も、否定はしない。
ただ、独立したどんな人からも聞くことが多い。
一人でやっていて、虚しくなった。もっと仲間とやりたかった。と。
マネジメントが人生に必須であるとは言い切れないが、
マネジメントができる人は「成果をコントロールできる人」と同義であり、
その人の人生は、豊かなものになるだろう。